2011年2月15日火曜日

小宮一慶:消費税アップだけでは日本を救えない、今後とるべき道は何かを考える

●小宮一慶:消費税アップだけでは日本を救えない、今後とるべき道は何かを考える
→  http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110209/259752/?ml

 前回は、日本国債の格下げをテーマに、経済が停滞し、高齢化が進む中で財政赤字
が膨らみ続ける日本が抱える問題についてお話ししました。それでは、この問題に解
決の糸口はあるのでしょうか? 今回は、日本がとるべき政策について考えていきた
いと思います。
・・・原文を見れない人もいるとおもうので、転載しときます。
やさしい、わかりやすい文章で書いてあります。小宮さんの分析をご覧ください。
俺が印象にのこった文章はこれ。
<--
 前回から今回にかけて、日本がいかに厳しい状況にいるかお話ししてきましたが、日本は本当に危ない状況です。多くの人は高をくくっているでしょうが、ブラジルもギリシャも、ハイパーインフレが来るまでは「自分の国は、今までも危機を乗り越えて来たのだから大丈夫だ」と思っていたのです。
-->
前回は、日本国債の格下げをテーマに、経済が停滞し、高齢化が進む中で財政赤字が膨らみ続ける日本が抱える問題についてお話ししました。それでは、この問題に解決の糸口はあるのでしょうか? 今回は、日本がとるべき政策について考えていきたいと思います。

企業業績の回復は海外市場頼み

これまでもお話ししてきましたが、新興国経済の好調と米国経済の回復に伴い、日本の企業業績も回復してきています。「法人企業統計 営業利益」を見ますと、2010年は前年比で大きなプラスの数字が続いています。
しかし、「現金給与総額」はそれほど増えていませんし、「有効求人倍率」「完全失業率」もそれほど改善していません。いわゆる「ジョブレス・リカバリー」です。
この背景には、何が起こっているのでしょうか。
日本企業は、利益のかなりの部分を海外で稼いでいるのです。特に大手メーカーは、その傾向が顕著です。例えば、自動車などは、どんどん海外に進出していますよね。中国など新興国で稼いでいます。鉄鋼なども国内での生産は頭打ちですから、2009年には新日本製鉄が同グループ系のブラジル鉄鋼大手ウジミナスの出資比率を上げるという報道もありました。新日鉄が住友金属と経営統合をするのも、海外のライバルと「海外で」真っ向から戦っていくためです。
このように、ある程度の体力があって人材の豊富な企業は、海外に進出して利益を上げているのです。ですから、このままでは国内はますます空洞化が進んでしまうというわけです。
また、企業は稼いだ国で税金を払います。国内では稼ぎがそれほど増えませんから、税収も大きくは増えません。もちろん、一部を配当で日本に取り込むこともありますが、国内での雇用が増えないということは所得税も増えません。
前回もお話ししたように、現在の日本のGDPは1993年の水準であり、なおかつ今後、ますます財政赤字が拡大する可能性が高いのです。ですから、日本は非常に厳しい状況であることは間違いありません。
解決の糸口はあるのでしょうか。

強い産業をさらに強く

日本の財政を好転させる道について考えてみましょう。私が考える解決策は、強い産業に資源を集中し、さらに国がサポートすることです。強い産業をより強くし、日本をより魅力的にすれば、空洞化を食い止めることができるのではないでしょうか。
例えば、宇宙・航空分野、アニメや漫画、精密機械、鉄道や交通システムなど、日本には世界で戦える産業がたくさんあるのです。交通システムに関しては、ハードだけでなくソフト面でも優れており、日本ほど正確に鉄道が運営されている国はありません。
また、最近、TPPについて農業の問題がクローズアップされていますが、私は日本の農産物は世界でも十分戦える商品が多いと思います。中国では、日本米や安全性の高い日本の食品が高額にもかかわらず売れています。
もちろん、世界にもカリフォルニア米などの安くておいしい米がありますから、TPPによって市場が自由に開放されると、日本にもそれらが広く普及する可能性があります。

農家を守るのではなく日本農業を強くする

それでも、コシヒカリやササニシキ、ひとめぼれなどの日本のブランド米は、日本でも引き続き売れるでしょうし、海外でも多くの需要があるでしょう。
つまり、私は日本の農産物が戦略物資、特に輸出産品になりうると見ています。
先ほどの例を用いますと、カリフォルニア米が入ってきたとしても、高い日本米を輸出すれば十分にもうけることができます。逆を言えば、日本農業の強みをさらに強化するという発想が必要なのではないでしょうか。
もちろん、コスト競争力も重要ですから、生産性を高めることは重要です。そのためには、強い農家をより強くする政策をとるべきです。今の農政は、弱い農家を補助金などによって守ろうとしているのです。「農業を守ること」と「農家を守ること」は別の話だという観点に立たないと、うまく行きません。私は農家を守るなと言っているのではありません。強い農家を増やす工夫をするべきだと言っているのです。
農家は、どんどん高齢化が進んでいます。平均年齢が65歳を超えている状況です。そこで、強い農業に協力してくれる農家の人に対しては、プラスアルファで年金を支給すればいいのではないでしょうか。
具体的には、高齢者となった農家の人たちが、農業をしたいという若い人たちに協力して、農地の貸し出しやノウハウの伝授、作業の手伝いなどを行うのです。そして、このように協力してくれた農家には、補助金ではなく年金を支給するのです。そうすれば、高齢になった農家も困りません。また、政策によって農地を効率化させることも必要です。
このような仕組みによって、効率性を高めた農地に多量の労働力や資本を投下することで、農業を拡大していくのです。
以前、私がデンマークを訪れた時のことです。デンマークは農産物が主要な輸出産品ですが、この国では農業を強くするために国の政策で集約化を行ったのです。
日本も同様に、強い農業を作るような政策を行うべきです。日本の農産物は、世界一品質がいいと言っても過言ではありません。ただ、いかんせん値段が高い。ですから、効率化を行うなどして値段をある程度下げることができれば、他国製品よりもある程度値段が高くても世界で需要が高まりますし、日本国民にとっても助かります。大多数の日本国民は、農産物の生産者ではなく、消費者ですからね。もちろん、その前に綿密なマーケットリサーチをする必要があることは言うまでもありません。
このように、日本は強い産業を伸ばしていくような政策をとっていかないと、税収も上がりません。国力も上がりませんし、そうなれば、ますます財政は悪化しますから、この先どんどん、国債の格付けも下がっていくでしょう。

消費税を上げたら、問題解決になるのか?

日本の財政赤字が拡大し続けているという問題がありますが、それに対して消費税を上げるという対策案があります。
では、消費税を上げれば解決するのでしょうか?
答えは、それだけでは解決策には「ならない」ということです。例えば、消費税を5%上げたからといって、12兆円ほどしか税収を上げることはできません。主要国中対GDP比で最悪の財政赤字を抱えている上に、毎年最低でも40兆円以上の財政赤字が増加しているのです。この低金利にもかかわらず、財政赤字の利払いだけでも10兆円あるのです。消費税上げで財政赤字増加のペースは鈍りますが、それだけでは不十分なことは明らかです。本質的な解決にはならないのです。
また、このまま財政赤字が膨らめば、ハイパーインフレになってしまう可能性があります。ハイパーインフレになったら、国の財政赤字の問題が解決するのではないかという話がありますが、それについては疑問に思います。
もしハイパーインフレが起こったら、金融や財政が滅茶苦茶になってしまいます。過去にブラジルやアルゼンチンが経験したような状況に陥ってしまうのです。さらに、ハイパーインフレから回復するまでには10年単位の歳月を費やすことになります。
ハイパーインフレになったからといって、国力が上がるわけではありません。単に、借金している人が得をするだけの話です。逆に言いますと、預貯金を持っている人たちの犠牲で国債が賄われるだけの話なのです。国債の95%程度を国内で消化しており、その原資は国民の預貯金ですから、国民の財産が犠牲になるだけです。
ハイパーインフレになったら、どう転んでもいいことは何一つ起こりません。特に、真面目に働いてきた人たちが大損するということになってしまいます。
もし、この兆候が事前に分かったら、多くの人は海外の銀行にお金を預けるようになるでしょう。外国の金融機関の日本支店では日本円換算で2000万円程度から預かってくれる所もありますから、それ以上の預貯金を持っている人は外貨に換えて預けることでハイパーインフレから逃れられるでしょう。それほど金融資産を持たない人は、金や株を買うなどして対応することも考えられます。
いずれにしても、日本の金融機関から一気にお金が「逃げる」ことにもなりかねず、こういった事態は避けなければなりません。

地方に財源や権限を移譲すべき

財政赤字の問題は、消費税を上げただけで解決できる問題ではありません。しかし、財政破綻を防ぐための努力をするということは非常に大事なことです。ハイパーインフレになって、うまく行った国なんかありませんからね。
また、努力をすれば、その結果次第で国債の格付けも上がる可能性もあります。歳出を削減して、歳入を少しでも増やしていくために何ができるか。
税を上げるだけでは、国民は納得しません。民主党は公務員人件費の2割削減をうたっていましたが、その公約はどうなってしまったのでしょうか。
警察官や自衛官など特殊な職務を行っている人たちは別として、国民の税金で暮らしている普通の事務を行っている公務員の年金のほうが、私たち一般の国民よりも高いのに納得できる国民はいないはずです。(民主党が今後の地方選を含めた選挙でどれだけの得票をするかは不明ですが、愛知県や名古屋市の選挙の結果は、この先の国民の投票行動を示唆していることは明らかです)
ではどうすればいいのか。私は道州制を取り入れることも一つの策だと私は考えています。つまり、道州に分けて、税源も移譲して、地方ごとに統治していくということです。

道州制の導入を検討すべき

中央政府は大きくなりすぎてしまって、コントロールできなくなってしまっているのです。例えば公共事業も、何が必要で何が無駄かは、地方で判断してもらったほうがいいのではないでしょうか。中央政府はもう把握しきれていませんから、公共事業は地方の判断でやるものを決め、地方の財源で行えば、必要なものだけ実施するようになるでしょう。
各地にある経産局など中央官庁の出先は、各地方のための仕事をしている部分は地方に職員もろとも委譲すれば良いのです。そして、不要ならば独自の判断でやめてしまうのです。
国は国防と最低限の社会保障、そして外交に特化し、地方は地方で治めていくのです。地方は今、国からお金をもらうことしか考えていません。それでは地方を活性化していくための工夫が出ないのです。ですから、道州制にすることで地方に権限と責任を与え、地方は地方で運営していく仕組みにすれば、おのずと財政に目を向け、地域の活性化に力を注ぐでしょう。
道州制は憲法の改正なしにやれます。もちろん、大変なことですが、廃藩置県を行った明治政府に比べれば、小さな改革です。道州制によって地方に権限を与え、税収を上げるための工夫をし、地域の活性化について考えてもらうことは、ひいては日本経済の発展に繋がると思います。
前回から今回にかけて、日本がいかに厳しい状況にいるかお話ししてきましたが、日本は本当に危ない状況です。多くの人は高をくくっているでしょうが、ブラジルもギリシャも、ハイパーインフレが来るまでは「自分の国は、今までも危機を乗り越えて来たのだから大丈夫だ」と思っていたのです。
危機感をむやみにあおりたくはありませんが、危機であるという認識を持つことは必要なのです。
(つづく)
小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント。小宮コンサルタンツ代表。十数社の非常勤取締役や監査役も務める。1957年、大阪府堺市生まれ。81年京都大学法学部卒業。東京銀行に入行。84年から2年間、米国ダートマス大学エイモスタック経営大学院に留学。MBA取得。主な著書に、『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』(以上、ディスカバー21)、『日経新聞の「本当の読み方」がわかる本』『日経新聞の数字がわかる本』(日経BP社)他多数。最新刊『日本経済が手にとるようにわかる本』(日経BP社)――絶賛発売中! 小宮コンサルタンツBlog: komcon.cocolog-nifty.com/blog

0 件のコメント: